前回は講義の前半でワイン製造の過程などについて説明しましたので、今回はすぐにテイスティングに入ります。今回試飲するワインは以下の3種類です。写真左から、
試飲の順番はワインの年齢順に、若い方からということにしました。
(1)と(3)は同じ葡萄の種類 Sangiovese (サンジョヴェーゼ) がベースになったキャンティワインで、(2)はウンブリア州の Sagrantino (サグランティーノ) という葡萄を使ったワインです。
ちなみに葡萄の名前 Sangiovese ですが、これはイタリアで最も古い葡萄で、ローマ時代から早くも飲まれていました。その時代のワインは、今のように食卓の楽しみとしてではなく、神にささげる大変宗教色の強い飲み物でありました。ですから San Giovese という名前も 神の名前「ゼウス」 (Zeus=Giove) から取ったものなのです。
それでは葡萄の違いと年齢の違いを頭に入れてその特徴をみていきましょう。
テイスティングの第一段階では『色』を見ます。
グラスに注いですぐに分かるのは、(1)のワインは明るい色をしているということです。これは樽の中での木との接触時間が少なかったということを意味しています。若いワインということですね。
もっとよく色を見るためにはグラスに白い布を当ててみます。この色は Rubino (ルビー、紅玉という意味) と呼ばれます。
第二段階では『香り』を確認します。
通常ワインは飲み始める30分前に開栓することが望ましいといわれています。それは空気と触れ合わせることによってワインの香りをよく感じるためです。
香りを確認するには2つのステップが用いられます。
まずはグラスを静止させたまま手に持ち、鼻をすっぽりとワイングラスに入れて香りをかいでみます。ここで感じる匂いはそのワインの第一印象といってもよいでしょう。(1)のような若いワインの場合はバニラの香り、フルーツの香りなど軽くさわやかな感じがするといわれますが、表現方法は人それぞれですね。
その次にグラスを持ち上げて回してみましょう。これはより多く空気と接触を持たせる事で、最初に感じた香りと違うものを感じることができたり、より鮮明に香りを嗅ぎ分けることができるためです。ただ、ワイングラスの細い足を持って上手にワインを回すにはいくらか経験が必要なため、それができるまではテーブルにグラスを置いたまま滑らせるように回してもかまいません。但し手を添える部分はなるべくワインから遠い場所にします。ワイングラスの細い足の部分か、もっと上級になると支えの部分を持って持ち上げるのが理想的です。これはワインに手の匂いの影響を与えないためです。
第三段階でやっと、ワインの『味』を吟味します。
口に含むのは少量にしましょう。これをすぐに飲み下さず、口の中の空洞を使って、またさらに空気とワインを混ぜ合わせます。口の奥から鼻に香りを通らせるようにしてさらに香りも感じてみましょう。
この中では(3)のワインが一番年齢が高いのですが、年を経たワインはしばしばスパイスの香りなど摩訶不思議な香りを作り出すことがあります。これを感じとることがワインテイスティングの楽しみですね。